新入社員の育成にあたって -「人間力強化」を忘れていませんか-
NKB通信2004年3月4日号
今年も本格的な春の訪れと共に、新入社員を迎える季節となりました。
しかし、昨今の企業環境は、言葉で言い表せないほど、厳しさが続いているのが現実です。そのような中で採用した企業側にとっては、「いかに将来を託す新入社員の早期戦力化を図るか」が、経営の重要な課題ともなります。
しかし、現実には環境が厳しい中、少しだけの研修を行い、いきなり現場に配属する企業も多いようです。つまり即戦力をねらっているのです。
確かに仕事(作業)は身につきますが、結果的には基本的な教育をしっかり行わないまま、実務に就ける事は経営にとって大変なリスクを伴いかねません。
というのは、学校でも家庭でも「人間としての基本」を学んでいないため、社会常識が欠如しているからです(このことは原因が根深いがために一企業の対応での領域を超えている現象でもあります)。
最近では、「できれば、このような若者を採用しないのが唯一の企業防衛だ」という教育担当者もいるほどです。
なぜなら、生きるために「当たり前の事ができない人達」だからです。
このことは、当然新入社員に限ったことではありません。
例えば、携帯電話マナー、電車内の化粧行為、ビジョンなきフリーター、遊び感覚の援助交際、深夜2時や3時に寝るという生活習慣から脱し切れず遅刻を繰り返す(朝起きられない)人達の増加等。
このようなことから、弊社の新入社員研修でも「人間力」を強化して欲しいという要請が強くなっています。
企業人としての意識、マナーの強化は当然必要なことです。しかし、前提となる「人間力」の強化なくしては、意識やマナーの修得も上辺だけのものとなってしまいます。
このことは、以前にもこのコラムで提起した「自己責任」がないままに「自由にやりたい」だけを叫び、周りの迷惑を考えずに、自分勝手実現のためにのみ行動する人たちの増加につながります。
また、自分の主体的な意志を持たず、「依存と保護」だけを求めている人の増加の原因につながっているのではないでしょうか。
その結果、厳しい就職戦線を突破して入社したにもかかわらず、職場や仕事に適応できず、簡単に辞めてしまう現象にも結びついているようです。
「人材」から「人財」にするための、人づくりの原点を真剣に考える事が、企業存続にとっても大変重要な時代になったのではないでしょうか。