気配り脳を育てろII!-マナー知らずが、業績低下を招く-
NKB通信2004年5月15日号 取締役 研修部長 島根 敦
前回のコラムには多くの反響をいただきありがとうございました。
最近『接客』の重要性がクローズアップされています。ある有名ビジネス誌も『接客の復権』という特集を最近組みました。
確かに、限界近くまで価格破壊が進んだ今、安いだけでお客様を引きつけ続けることは困難であり(価格だけで購入する顧客は、もっと安い所があれば、すぐにそちらに行ってしまう)、いかに「気持ちよい接客」を実施するかが重要なポイントとなります。
つまり、業績向上には接客力の向上が不可欠なのですが、接客とは『気配り』以外の何ものでもありません。
よく接客というと「マニュアルの整備」が言われますが、マニュアルだけでは全てのお客様に気持ち良さを感じてもらうことは不可能です。というのは、お客様が求めるものは一人一人皆違うものであり、誰に対しても同じような画一的接客をするだけでは気持ちよい接客とはならないからです。
例えば、一昔前によく使われた事例として、ハンバーガーショップで「ポテト30個」と頼んだら、店員に「こちらでお召し上がりですか、お持ち帰りですか」と聞かれたというものがありました。
気持ちよい接客でリピーターとするには、そのお客様が求めているものを察知し、そのお客様に合わせた接客をすることが肝心なのです。
(これを『察知型サービス』と言います)したがって、気持ちのよい接客のためにはマニュアルにプラスして、実際に接客する人の『気配り脳』が発達していることが必要不可欠なのです。
しかし、前回申し上げたように、気配り脳が十分育っていない人が増えているので、いくらマニュアルを整備しても、気持ちよい接客ができないケースが多いのです。
例えば、こんな体験をしたことはありませんか。
1.気持ちのよい挨拶をしない店員
先日のGWに家族でホームセンターに出かけました。そこは1年前にオープンしたばかりの、最近よくある非常に大きな売り場面積で豊富な品揃えを誇るお店です。
買い物を終えてレジに並び、商品を袋に詰めてくれるのを待ちながら、ふと店員さん見ると「大きな声で挨拶します」と書いた胸章をしていいました。
ところが…
その店員さんは袋に詰めた商品を手渡すとき、無言なのです。最後の袋を渡すときに、やっと「ありがとうございました」と一言。しかも、蚊の泣くような声で…
考え見たら、胸章に「大きな声で挨拶します」と書いていること自体、それができていないから、証拠以外何ものでもないでしょうね。
他のスーパーのレジでは、店員さんが「お客様の目を見て接客します」との胸章をつけていました。しかし、実態は…
2.お喋りな人
外食産業に多いのですが、店員同士がお喋りをしているお店も結構あります。お客様のことに気を配ることより、仲間との話の方が大事な様子です。
大抵こういうお店は、例えばコップの水が無くなっても、こちらから要求しないと持ってこないものです。中には、声をかけてもお喋りに気を取られ、気づかないケースをあります。
3.よけない人
お店で店員さんとすれ違うとき、サッとよけてくれるお店と、まったくよけようとしないお店があります。中には、こちらが大きな荷物を持っていても、よけようとしないお店すらあります。
4.動きに変化のない人
お店が混雑し、行列をつくってしまっているのにも関わらず、悠然と動いている店員がいます。例えば、料理を運ぶ速度も悠然、帰ったお客様のテーブルを片づけるのも悠然…
待っているお客様のことなんて点でお構いなしように、悠然とマイペースで動き続ける。
5.提案をしない人
電話をかけて相手が不在の時、「○○は今外出しているのですが…」で終わってしまう対応のことです。
気の利いた人や、教育が徹底できている会社であれば、「申し訳ありません、○○はただ今外出しております。戻り次第連絡をさせましょうか?」と提案をしてきます。
ところで、前述のホームセンターにおける、その後の話です。
レジでの精算を済まし、外に出ていくと、駐車場の交通整理をしている警備員さんがいました。
連休中でもあり、駐車場は大混雑。そんな中で、その警備員さんは大声を張り上げ、「駐車場に行く方は左へお願いします!出口へ行く方は右です!」
と叫び続けていました。ほとんどの車でエアコンをかけていて、窓が閉まっているにも関わらず…です。
熱心な人だなと思いながら、車道を渡るために待ってました。すると、その警備員さんは車への案内をしながら、待っている人たち対しても「あと2台通しますので、もう少々お待ち下さい」と一言。
これが、気配り接客というものではないでしょうか。連休でもあり、初めて来た人も多く「どっちへ行ったらいいんだ」と思っている人もかなりいたはずです。また、待っている人は「あと何台待てば渡れるのか」と思っている。そういう人に対する、見事な察知型サービスではないでしょうか。
では、察知型サービスを実施させるためには、どうしたらよいのでしょうか。勿論、もともと持っているセンスの問題もあります。
しかし、「察知型サービス」は教育によって身につけることが、十分可能です。
皆様も、「察知型サービス」の実施で、お客様をファンにしてみてはどうでしょう。