NKB通信

二極化するコミュニケーション
-いつもつながっていたい人と、そうでない人-

NKB通信2004年6月2日号

前回のコラムでは、弊社の島根が「察知型サービスの実施で、お客様をファンにしてみてはどうでしょう」という内容をご案内いたしました。
今回は、それとも関連する「二極化するコミュニケーション」という話題をご紹介したいと思います。
現在の日本は、「勝ち組と負け組」に代表されるように、世の中すべてが二極化の方向に進んでいます。ところが、人同士のコミュニケーションでも、この傾向が顕著になっているようです。
実は、先日、私の友人がつとめる会社に、イギリス人バイヤーが商談にやってきました。イギリス人バイヤーが“日本人の生活スタイルを知りたいので、是非、電車で移動したい”という希望があり、友人は都内を電車で案内したそうです。 その時の出来事です(もちろん、やり取りは英語ですが)。ちょうど、JRの電車に乗ったところ、7人がけのベンチシートに座っている男女が、なぜか皆、携帯電話でメールを送受信していたようです。
バイヤー:“シートに座っている人が脇目もふらずに携帯端末に向かって、何か打ち込んでいるが、これは何?”
友人:“これは、携帯電話を使って電子メールのやり取りをしているんです”
バイヤー:“日本の皆さんは、そんなにお仕事で忙しいのですか”
友人:“仕事でメールをやり取りしている人は少ないと思います。ほとんどは、プライベートなやり取りです”
バイヤー:“あんなに長い時間、電話に向き合っているということは、たくさんの友人がいるのですか?”
友人:“いや。同じ人と、短い文章でやり取りしていると思います。ほら、受信を知らせる光が、頻繁に点滅しているでしょ”
バイヤー:“メールでリアルタイムにやり取りができる友人なら、電話で話をした方が、気持ちが伝わりませんか?”
実は、この後、友人は応えに窮してしまった…と言っていました。
結局、イギリス人バイヤーは、「なぜ、すぐ話ができる相手とメールでやりとりをするのか」を理解することなく、本国へ旅立ちました。
実は、この現象、「コミュニケーションの二極化」が一つの要因になっていると言われています。
「コミュニケーションの二極化」とは、
○ コミュニケーションをとりたい人と、とりたくない人
○ 大事な人と、そうでない人
○ メールでは言えるが、面と向かっては言えない人
○ 自分の主張をはっきり言える相手と、自分の主張をしない相手
○ メールになると相手を攻撃的するが、面と向かうとおとなしくなる人
といった現象になって現れています。
つまり、「大切な人」とは、「常につながっていないと心配」との気持ちが働き、メールでの短い文で「つながりを確認している」ようです。 では、なぜ、メールなのでしょうか。これは、電話のような「熱い関係」よりも、「さりげなくつながっている」という「温かい関係」が好きだからという、心理学的な分析もあるようです。
よく、電車の中で、「優先座席付近では、携帯電話の電源をお切りください」という案内がありますが、誰も耳を傾けようとしません。 これは、近くにいる見ず知らずの人よりも、今目の前にいない大切な人が優先されてしまう結果なのです。つまり、近くにいる見ず知らずの人は「人」ではなく、「もの」と同じ感覚で捉えているのです。これでは、マナーの原点である「相手に対する思いやり」は出てきません。
「コミュニケーションの二極化」は、ビジネスの世界でも大きな影響を及ぼしています。例えば、「コミュニケーションをとりたくない人」が上司や先輩であれば、部下や後輩は自ら関わってこようとはしません。 相手が自分と歳の離れている場合、価値観や考え方が違いますから、本人は非常に緊張してしまうようです。 そこで、上司や先輩が、気を遣っても、逆に心の底では、「緊張しちゃうから、ほっといて欲しい」という気持ちになっているケースもあるようです。ただし、表面的には、うれしそうな表情をしますから、本人もストレスがたまるようです。
では、どうすればよいのでしょうか。一つは、「コミュニケーションの二極化が進んでいる」ということをふまえた上で、 「バランスの良いコミュニケーション」をとることができるように、トレーニングをすることです。
そして、もう一つは、前回のコラムで、弊社の島根が主張した「気配り脳を育てよ」に代表される「心の教育」を進めることでしょう。
この話題については、続編がありますので、また、当コラムで機会がありましたら、ご紹介したいと思います。

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