NKB通信

敗者復活戦の合宿にみるモチベーションの大切さ

NKB通信2004年 7月15日号

過去、楽器を購入した経験があるが、演奏の段階でその習得に失敗したという方々を集め、2泊3日の合宿研修で見事に演奏できるように復活させる研修があると言う。 ニーズは高く、参加者が合宿を終え、演奏できるようになる確率は100%。一体どんなやり方をしているのか興味を持った。
もともと参加者は、何かのきっかけで楽器に関心を持ち、高いお金を払って購入したにも関わらず、うまく弾けない、なかなか上手にならない、一人前になるまでに時間がかかる、などの理由から、意欲をなくし、ついにはまったく楽器を手にしなくなっていくパターンがほとんどらしい。
一方そのような方々も、どこかでこのまま終わりたくない、という気持ちが根強く残っているとのこと。主催者は、 かなりの方からこの相談を受けたことが、合宿を始めるきっかけになったと言う(実は私も物置の奥にフォークギターが眠っている)。
過去にこのような体験をしている方々は、どこかで『自分は楽器一つものにできなかった』といった挫折感を持ち合わせていることも特徴だ、と主催者は言う。
「挫折体験のある方に、その原因をああだこうだと分析して、こうしましょう、などと改善提案をしてもほとんどの場合、うまくいかないんです。 今度だめだったらどうしよう、という気持ちが優先してしまうんですね。」
ここでの合宿研修のやり方はユニークだ。うまくいかなかった原因に目を向けるのではなく、むしろもう一度楽器を弾くことの楽しさを味わってもらう。
そのためにも『弾けた』という、【達成感】や【喜び】の体験を重視したプログラムで構成されているという。
しかも、この合宿の見せ場は最後にやってくる。感動が長く持続するようにと最終日に、聴衆を募り、コンサートを開くのだ。 そこでの生演奏が、締めくくりのプログラムとして準備されている。たくさんの人を集めたコンサートで、自分がオーケストラのメンバーとして生で楽器を演奏するという貴重な体験は、感動的な締めくくりとなるだろう。
この手法を営業教育に活かせないだろうか。
一つは挫折体験をしている営業担当者。スランプに陥っている営業の方の敗者復活塾だ。営業教育については、ひとたび本屋に足を運べば『過去、実績を上げた名だたるトップセールス』の方々がたくさんのノウハウ本を出している。
確かに勉強にはなるだろう。しかし、その考え方ややり方が、現在の自分の状況に活かせないのであれば意味がない。
また、トップセールスマンが講師になると、挫折体験を持った営業の方は、自分との比較でよけいに落ち込むかもしれない。実は営業活動そのものは、数字を作るまでに、様々な要素が入り込み『こうしたら必ずこうなる』という因果関係が明確にならないことも多い。
例えて言えば、どんなにセールストークを磨いても、お客様との小さな約束が守れない営業担当者は結局、信頼をなくしていく。
ここに、実効のある営業教育を構築する難しさがある。それでも、営業にとって、自分自身の意欲をどう高め、コントロールしていくかというモチベーションの問題は、永遠のテーマであることに変わりはない。
そこで、挫折体験を持つ営業担当者、スランプに陥っている営業の方に、もう一度【達成感】を味わってもらうことに主眼をおいた研修プログラムを追体験してもらう。
また自らのモチベーションを高め、持続していけるような仕組みを構築することができたら、これは相当おもしろい。
営業活動には必ず波がある。挫折体験やスランプの可能性はどんな営業にも訪れる。
この時『何がこの営業担当者の課題か』、『どこに問題があるのか』、『なぜ売れないのか』といった原因分析中心の手法に加え、もう一度【達成感】や【喜び】を体験してもらう仕組みづくり、支援体制づくり、そしてモチベーションをどう高めるのかの観点を取り入れた自社の教育環境作りなどについて、再度見直しを図ってみるのも大切なことではないだろうか。

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