何もしないことが最高のサービス?
NKB通信2004年9月15日号 取締役 研修部長 島根 敦
毎年9月、我が家は伊豆に旅行に行きます。いつからそうなったかはよく覚えていませんが、毎年の恒例となっています。
さて今年も多忙の合間をぬって恒例の旅行に出かけました。今年は金曜日の仕事を終えた後に出発し、2泊しましたが、そのホテルでの『サービス』の出来事です。
1泊目のホテルは、家族全員が「また泊まりたい!」と口を揃えて言いました。しかし、2泊目のホテルは皆「別に…」でした。
その違いはどこにあったのでしょうか。
施設面を比べてみると2泊目のホテルの方が優れているでしょう。
そのホテルは海岸のすぐそばに立地しており、ホテルから直接浜辺へ出ることができました(そのホテルを選んだのも、以前その浜で立ち寄ったことがあり、「あのホテルに泊まれば、この浜で一日遊べるな」と感じたからです)。
露天風呂も広く、そこから見る夕日や満点の星は見事でして。また、部屋では波の音を聞きながら眠ることができるなどは、なかなか体験できないものです。食事も部屋出しで、勿論布団も敷いてくれます。(そのため伊豆でも有名ホテルの一つだと思います)
それに対し、1泊目のホテルは海は見えるものの、海岸からは離れており遠くに見える程度です。また、露天も半分屋根があり半露天というものでした。
布団も自分達で敷きます。また、夜遅い到着でもあり朝食もつけない素泊まりでした。
にもかかわらず、何故1泊目の方が良かったのでしょうか。
それは「人的サービス」に差があったからです。前回のコラムでも取り上げた接客の差です。
2泊目のホテルは全般的に「画一的サービス」の提供なのです。
つまり、決まったことを決まった通りに行っている感が拭えないのです。そのため、顧客側の個別ニーズに対し臨機応変な対応が少ないのです。
例えば、ホテルに到着すると、まずロビーに通されて飲み物とお菓子を出していただきました。しかし、我が家は午前中プールで泳ぎ、かなり疲れていたので、すぐに部屋に行ってくつろぎたかったのです。それにもかかわらず、当然のようにロビーに案内されました。
また、車の駐車も「車の移動はこちらで行いますので」と、これも当然のように言われました。
一言の確認がないのです。「車の移動はこちらで行いたいと思いますがよろしいでしょうか」と。
あるいは、下の子供が疲れからか微熱がでてしまったのですが、「少々熱っぽくて」と言うと「体温計をお持ちしましょうか」
までは言ってくれたのですが、「熱はありますか」とか「お薬はお持ちでしょうか」とまではありませんでした。また、
その後もその件については何もありませんでした。
おそらく、こちらが要望すればキチンと対応をしてくれたと思います。しかし、察知型サービスにまでは至っていませんでした。
1泊目のホテルは、こちらから言わなくても対応しようとしてくれました。例えば、荷物が重くて子供がドアを開けられそうもないのを見ると、すぐに飛んできてくれて開けようとしてくれたり、駐車場で荷物を下ろす際に蚊に刺されたことを知ると、すぐに「キンカンをお持ちしましょうか」
と言ってくれたりしてくれました。
ちなみに、7月に、あるお客様の研修で新島に行き、村営のロッジに泊まらせていただきました。そこで、朝食をとっていると、食堂の人がある家族連れに向かい「どう、具合は良くなった。ご飯食べられる?」と心配そうに声をかけていました。どうやら、子供さんが前の日に具合が悪くなっていたようです。
ただし、2泊目のホテルの従業員の人が手を抜いているということは全くなく、一生懸命にサービスをしているのです。しかし、残念ながらその熱意がお客様に評価されないという結果となってしまっているのです。
実はこういうことは、他でもよくあるケースではないかと思います。自分は一生懸命サービスをしているのに、何故かお客様から評価されない、アンケート結果が良くないというケースが。
こういう場合は大抵、画一的サービスを提供であり、個別サービスになっていないと言えます。
CSは『顧客独自の価値観』で決まりますので、顧客に満足していただき、リピーターや紹介をとるためには、『個別対応』が不可欠と言えます。
場合によっては、「なにもしないこと」がその人にとって最高のサービスなのかもしれないのです。
顧客は『個客』なりとの認識で『個別対応』実施でファン客を増やしましょう。
なお、個別対応には手間がかかります。しかし、こちらが手間をかけた分だけお客様は満足するのです。