人との対立を避ける人々
NKB通信2004年10月2日号
最近は、今までとは違った特性をもった人たちが増えています。
例えば、こちらの働きかけに対して反応をほとんど返さない「反応の弱い人」、自分の話し相手をしてくれる相手を求めている「寂しい人」、忙しいことが習慣になってしまい、待たされるとイライラする「忙しい人」、自分の決定に自信がない「優柔不断な人」など、色々な方が増えています。
そのため、お客様応対が以前にも増して難しくなってきています。
先日も店頭で長く、対面販売に携わっている方とお話をする機会がありましたが、「お客様の気持ちを、把握するのが難しくなった」とおっしゃっていました。
さて、最近、「他人との対立を極端に嫌がる」という特性を持った人が増えています。
「他人との対立を極端に嫌がる人」とは、どのような人かというと、自分の主張や考えは持っているのですが、それを相手にぶつけることで、対立が起こることを極端に嫌う人のことです。このような行動をとる理由としては、対立によって、自分自身の心が傷つくのを恐れるという心理があるようです。
そのため、仮に、接客や応対に不満があっても、その場では「自分が我慢する」という行動を選ぶことが多くなります。
実は、ある会社のご依頼で、店頭での接客をレベルアップするため、実際のお客様の声を伺ったことがあります。
その際、この「他人との対立を極端に嫌がる人」が意外に多く、びっくりしたことがあります。また、その際、更に驚かされたのは、あるお客様からの、次のような一言です。
“自分があまり気に入っていない商品を勧められると、本当は断りたいんですけれど、断ると店員さんの態度が変わっちゃうんじゃないかと不安で…。
そうすると、楽しいお買い物が台無しでしょ。だから、あまり高くないものだったら、買っちゃうことにしているんです”
つまり、「自分が許すことのできる金額で気持ちが楽になるなら、お金で決着をつける」という考え方になります。
当然、「許容できる金額」には個人差があるのですが、この方は「1万円以下」とおっしゃっていました。
「良い商品なら、実際に使ってもらえば、その良さがわかるのだから、いいじゃないか」とお考えになる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、このタイプの人に伺うと、「商品そのものの問題」ではなく、「このお店に行くと、また嫌な思いをするから、二度とこのお店には行かない」と、異口同音におっしゃります。この結果、当日の売上は上がっても、大切な固定客を逃していることが分かりました。
また、精神的には不満を持っているため、一部の方は、強力な「反対派」となり、マイナス情報を口コミ等で流すことがあります。インターネットの掲示板などを見ていると、「その場で、担当者に伝えれば決着がつくのに」と思うような内容を、匿名で告発しているケースが見られます。実は、これも「他人との対立を極端に嫌がる傾向」の人のようです。
事実、ある住宅会社の監督さんから伺ったお話では、完成検査の際、一つひとつ出来映えを確認し、明確な指摘がなかったので、ご満足頂けたのだろうと思っていたそうです。
ところが後日、このお客様が住宅関係のインターネット掲示板で、その住宅会社の施工上の問題点を告発し、びっくりしたそうです。
このような人は、自分の主張をはっきりと言わない、つまり言い切らない傾向が強いのが、コミュニケーション上の特徴です。ですから、話の語尾に注意をはらっていると分かることが多いものです。例えば、“ちょっとねぇ…”“だいたい、良いんじゃないかなぁ…”といった言い方が、これに当てはまります。
社会が複雑化するにつれ、以前は少数派だった、このような特性を持った方が増えてきています。また、今後は、更に色々な特性を持った方が増えると言われています。
お客様との接客応対に限らず、部下指導でも同じです。コミュニケーション力の向上が、今後ますます重要になってくることでしょう。