高額商品戦略で安価競合に打ち勝つ
NKB通信2004年11月17日号 代表取締役 社長 秦野 浩行
最当たり前なことですが、通常「高い商品」は、高いだけのことはあるものです。
したがって、高額商品を販売する会社は、このことをお客様にしっかりと周知徹底するという戦い方で、安価商品販売の競合を排除します。
ところが、近年、高額商品営業が、安価商品営業と同一テーブルに乗せられ、振り回される」という事例を、数多くうかがいます。
そればかりではありません。最終的に、高商品営業側が、大幅な値引き商談に持ち込まれ、「赤字受注」となってしまう話を良く耳にします。
お客様の立場からすれば、実に喜ばしい限りです。しかし、経営者や、商品開発者にしてみれば、何とも情けなく、また腹立ちさえ覚えるのも当然と言えるでしょう。
こうなる原因は、大きく二つあります。
一つは高額商品を売る営業担当者が、「高額である理由」、つまり商品の優位性を、しっかりと説明できないことです。
そして、もう一つは、会社として高額商品を提供する体制が確立していないことです。
前者は、徹底した商品知識と商談の訓練で、かなり改善できます。
しかし、後者は、会社としての販売戦略を再構築しないと、営業担当者個人の力では、どうにもならない問題です。
その実例は、住宅業界の多くの現場で垣間見ることができます。
坪単価25万円の住宅と、60万円の現場を見比べた場合、CSマナー(挨拶、施主・近隣への配慮、礼節、職人の人柄)、施工品質(丁寧さ、美しい仮設、基準施工、無傷養生、検査精度)、安全施工(整理整頓、安全行動)、商品品質(搬入資材管理、良質設備)等、「安価の住宅」の方が総合的に良い場合があるのです。
先日、ある高額住宅を建設中のお客様にお会いした際、『なぜ、うちの現場の職人さんの作業服はバラバラなの。仮設トイレが汚くて目隠し板もないの。
解体作業が乱暴なの。現場監督者が居ないの。雨の日に基礎を打つの。お引き渡し式がないの…』といった不満が続出しました。
これでは、ステータスの高い「高額住宅」を購入したお客様の気持ちが、収まるはずがありません。誰でも「高額商品の方が、全ての点で勝っているに違いない」と思い、購入するものです。
現に、「勝ち組」と称される高額住宅を販売する会社では、これら全てを差別化できる工事体制作りに、全社を挙げて取り組んでいます。
元々、高額商品と低額商品とでは、「戦うステージ」が異なるものであり、競合関係にはなりにくいものだったはずです。
この原点に立ち返って、本来の市場競争が機能する状態に戻すことが重要です。
“高い良いものはそれに見合った価格で売る”。そんな「当たり前な経営」ができる会社と営業を目指して頂ければ幸いです。