『未体験・大リストラ時代の日本式経営法』
NKB通信2009年 1月6日号 代表取締役 社長 秦野浩行
昨年は、日本独自でない円高等による世界的バランス不況の影響で国内景気は急激に後退、年末にはトヨタ自動車、ソニー、シャープ、キャノンといった日本を代表する企業が相次いで期間従業員のみならず正社員をも雇用調整するに至りました。
この事態に、弊社クライアント企業のトップは、以下の如く現況をコメントしています。
A企業トップ:『上期目標未達に加え、下期の案件が全く見えない状況!』
B企業トップ:『私の50年の経営経験でも、これ程の不況は初めて!』
C企業トップ:『今できることは、とにかく受注積み上げで来るべき事態に備える
だけ!』
D企業トップ:『今年は昨年以上に業績が悪化する年になる!』
過去の景気後退期では、最大市場の関東地区やトヨタ本拠地である中京地区では危機意識を抱くまでの不況感はありませんでしたが、今回はこの地区での景気後退スピードが尋常でなく事態の深刻さを物語っています。
いずれにしても、日本の企業は緊急事態との認識で本気で“生き残りを賭けた経営”に直面したと言えます。“狼が出るぞ!”と言われ続けて数年、“本当に出た”今、正に戦後培われた日本式経営が試される時とも言えます。
-通用するか日本式経営法-
日本式経営は、①終身雇用、②貢献序列、③社員育成の3大仕組みのシナジー効果で社員の帰属意識の醸成をも可能にする経営法として定評ある経営法です。
とは言え今回は、コストリスク管理を強化し大量の期間従業員を採用してきた結果として失業問題を深刻化させました。特に最大の誤算は、長期に渡る期間従業員が既に会社への帰属意識を持っており、彼らに身分だけで簡単に切り捨てる企業の冷たい姿勢に戸惑いと憤りを感じさせてしまったことです。このことは、労働争議の体験もなく安心していた解雇社員も同様で、こと取り消しになった内定者にあっては企業のみならず社会全体への懐疑心をも抱かせてしまったことは大汚点でしょう。
これを機に今後は、期間従業員、社員、就職者は企業観を改めることでしょうし、企業への帰属意識が如何に意味のないものとして扱われることでしょう。
一番怖いのが今回、解雇の対象にならなかった社員の間にも同様の懐疑心が生まれることで、事実上、日本式経営の崩壊を早める結果となりましょう。
いずれにしても、優勝劣敗の原理が機能する国際的経営を強いられる日本企業にとって、日本式経営をどのように扱うのか、その決断が迫られることになります。
但し、どのような選択をするにしても、企業はその社会的、道義的責任から以下のことを順守することが肝要と考えます。
“社会から支持される成長企業”
これが今年のキーワードです。
◇大不況下の企業モラル(遵守事項)◇
1.突然の解雇を避けること → 例:予告アラーム制度
2.解雇者の住まい確保の支援を行うこと → 例:社宅継続貸与
3.次の就職斡旋の支援を行うこと → 例:企業職安の設置
4.生き残りに不可欠な教育はカットしないこと → 例:営業者教育