NKB通信

『”考える力”が低下していませんか?』

NKB通信2009年10月1日号    常務取締役 島根 敦

リーマンショックから早1年が経過し、ウオール街には再び高額報酬が復活しているようです。しかし日本では、昨年よりも今年の方が厳しい業績の企業が多く、2割減は普通、中には3割以上減になっているところもあります。しかも、未だ先の見えない状況…
そんな中、業績の回復が急務であり、各社が多様な緊急施策を打っています。しかし、基本ができていないと、その施策効果がありません。その基本の一つが、今回のテーマ『考える力』です。
さて、貴社の『考える力』はいかがでしょうか?

実は、考える力が低下していると以下のような現象が起こります。

1.手段と目的が混同され、手段の目的化が起こる
例えば、営業部隊が業績回復の手段として「訪問件数○○件」とか「アポ取り1日○件」などの施策を打つと、いつの間にか、それが目的になってしまいます。
「訪問件数が足らないから、このまま帰れない。とりあえずもう1件いくか」というようにです。商談でも、あくまで契約をいただくことが目的なのに、手段である「リサーチ」や「再訪」が目的になってしまいます。中には、お客様が買う気になっているのに、その場でクロージングをせず、次回アポをとる人もいます。
会議や朝礼、各種書類も同様です。考える力が低下していると、目的を見失い『朝礼のための朝礼』になります。また、目標設定で手段を目標にしてしまうこともあります。例えば、今期の目標は「5Sの徹底」などとしているケースです。

2.目標が不明確
「目標による管理制度」を導入していない会社は少ないとと思いますが、それがしっかり機能している会社も少ないと言えます。
その原因の一つが、設定する目標が「曖昧」なことです。目標とは、到達レベルを明確にして達成・未達成が客観的に解るものにしないといけませんが、それが不明確になりがちです。例えば、「業務の効率化を図る」「商品知識をつける」「部内コミュニケーションを活性化する」などです。これでは、達成・未達成を測定出来ません。コミュニケーションを活性化するとは、具体的にどういうことなのか、どういう状態にしたいのかを、きちんと考えていないのです。

3.話がわかりにくい人が多い
考える力が低下していると、話が長い割に何を言いたいのかわかりにくくなります。
まず、何を言いたいのか(=結論)を明確にし、それをどういう手順や手法で伝えれば正しく伝わるのかを深く考えていないのです。特に、結論がわかりにくになりがちです。
報・連・相でも要するに何なのか結論が解りにくくないでしょうか?

4.会議が長い割に結論がでない
会議が予定時間内に終わらない、また時間をかける割に大した結果がでないというにも考える力の低下によるものです。
会議が長くなる要因として、話が横道にそれ本題からずれ、それに気づく人が少ない。発言者の話がわかりにくい。等があります。また、そもそも議題を正しく理解できていないこともあります。これらはいずれも考える力の低下によるものです。

5.他責思考になる
目標未達の原因を、自分に求めず(自律要因)、安直に景気のせいや周囲のせい(他責要因)にしがちです。
物事が上手くいくかいかないかは、よーく考えれば必ず両方の原因があります。それを考えようとしないで、すぐに他責に求めがちです。

6.仕事の優先順位をつけない・間違える
「今、実施するのは、その仕事ではなく、こっちの仕事でしょ?」と感じる人がいませんか?これも考える力が弱いためです。
緊急度・重要度・影響度をしっかり考えて優先順位をつけるのではなく、単に好き嫌いや取りかかりやすさ等から優先順位を決めているからです。

7.実行計画内容が乏しい
目標を達成させるための計画を立てても、内容が乏しく、それでけでは目標が達成できないという計画になりがちです。
例えば、営業が新規開拓を目標にした場合、その実行計画が①リストアップ ②アポ取り ③訪問 ④結果検証 というものです。このレベルで新規が獲得できれば苦労しません。このレベルしか出てこないのは、目標を達成させるための施策には、どんな事柄があるのかを、しっかり考え、整理できていないためです。

8.問題がいつまでも解決しない
問題が発生しても、真の原因を深く考えず、表面的な原因に手を打ちます。
例えば、営業の目標未達に対して「新規が出来ていないから、下期は新規に力を入れる」、また製品不良発生に対して「整理・整頓が出来ていないから、それを徹底する」というものです。これでは、根本原因に手を打っていないため、たとえ一時的に解決はしても再発しかねません。「なぜ、新規開拓が上手くいかないのか」「なぜ、整理・整頓ができていないのか」を深く考え、真の原因を把握して手を打たなければ、本当に問題解決にはなりません。


以上、如何でしょう?皆様の会社は、これら『考える力』の低下現象は見られませんでしょうか?
もし、これらがいくつか見られるとすれば、確実に考える力が低下しています。
過去の経験則が必ずしも通用しなくなり、単に動けば成果がでる程甘くなく、問題が山積の今、社員一人一人に考える力(=ロジカルシンキング力)が乏しければ、この不況を乗り越えることが困難でしょう。

実際、最近ロジカルシンキング力強化を目的とした研修が増えています。ご興味のある人は、お気軽にご連絡を下さい。



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